ほたるや

蛍が売られてるお店のごとく、珍しくありたい

キルミーベイベー論-笑いの基本構造⑤-

キルミーの魅力は前述した

①少人数制かつ個性的・魅力的なキャラクター

②シュールな部分もあるが、基本に忠実な笑いを提供し続ける

の2つが挙げられよう
その他にも思いついた魅力を淡々と書いていく


キルミーベイベー (5) (まんがタイムKRコミックス)


③パロディネタが無い
近年の漫画に不可欠なパロディネタ
ジョジョだとかカイジだとかバキだとか、もうパロディされ尽くしただろーと言いたくなるくらいパロられる
正直言って、僕は基本パロディネタが好きではない

しかしキルミーはほとんどパロディネタがない
ウルトラマンネタがちょこっと出てくるくらいだが、これも笑いを取るためのものではなく、話の流れの中で出てくるものである
パロディに頼らないキルミーは、近年では珍しい優等生型のギャグ漫画だ

④時事ネタが無い
パロディと並んで多用される時事ネタ
笑いの道具としては安直で、作者の思想や考え方が垣間見られて嫌になることが多いが、キルミーは時事ネタはほとんど無い(ゆるキャラネタが少しあったくらい)
いつ何時見ても古さを感じないのがキルミーの魅力の一つだ

⑤オタクネタが無い
個人的に近年の漫画やアニメで一番嫌になるのは、オタクネタの隆盛である
まあ、正直そういう漫画は殆ど読まないので想像で言っている部分も多いが、イケメンや美少女がオタクであったり非リアであったり、2ch用語が出てきたり、中二病が多用されたり…
個人的に一番嫌いなのは、2chのスレッド名のような長ったらしいタイトルの作品(『俺の○○は△△だが、お前の××は□□なのだろうか』みたいなヤツ) 基本こういうタイトルの作品は見る気がなくなる

キルミーはオタクネタは一切ない ここが本当に素晴らしい
ずっと硬派なボケツッコミのやりとりを描き続けている 本当に素晴らしい
老若男女が理解できる、楽しい作品だ

⑥下ネタが無い
下ネタは非常に好き嫌いが分かれる
昔ながらの下品な下ネタもあれば、サービスショット的なエロい下ネタもある
僕は関西人なので下ネタには耐性があるが、あまりにも下ネタ(特に後者)に頼る作品には少し辟易してしまう

キルミーは下ネタは全く存在しない
下品なギャグは勿論、一応萌え4コマ作品であるのにパンツや水着シーンも出てこないのだ
この辺りに作者のカヅホ先生の信念が見られて格好良く思う

⑦キャラクターを増やさない
①と共通する点もあるが、新キャラの登場はテコ入れの基本である
魅力的な新キャラが登場すると、新たなファン層を獲得できる可能性もある 手っ取り早い人気獲得策だ
某ジャンプのラブコメなんかは、定期的に新キャラが登場して、逆にファンから呆れられたりもしている

キルミーは1巻からずっと、やすな、ソーニャ、あぎりさん体制が続いている(一発キャラの刺客などは除く)
この件に関しては、「新しいキャラクターを増やしてやすな達と絡ませて欲しい」という思いもあり、一概に賛成はできない
しかし、意地でもキャラクターを増やさず良質なギャグを提供し続けるカヅホ先生のプライドも垣間見える


他にも思い付いたら追加したい
キルミーの魅力の多くは、近年の漫画・アニメに対するアンチテーゼのようなものだ
萌えが世間に受け入れられ、地上波の番組で「ツンデレ」「リア充」などの言葉が飛び交う時代、その流れに逆行しているのは間違いない
ただ、こんな可愛い絵柄の作品なのに、手っ取り早い人気獲得策に走らず、自分で考えたギャグ、ボケ、ツッコミで勝負し続けるキルミーは、本当に愛おしいのだ
それでいてしっかり面白いというのが、本当に凄い


(続く)